2019年1月6日 | Re・コーポレーション

水回り歴史よもやま話



水回り設備歴史よもやま話

水回り設備歴史よもやま話

水回り歴史よもやま話:給湯器

 給湯器のお話はまずガスの歴史から始まります。日本でのガス産業は、横浜の地で幕をあけました。高島嘉右衛門(たかしまかえもん)という実業家が神奈川県庁からガス灯をつくるよう頼まれ、1872年(明治3年)に「日本社中」を立ち上げました。彼は、横浜市の神奈川県庁と大江橋から馬車道・本町通りまでの間に、ガス灯十数基をズラリとならべ、1874年(明治5年)9月26日、いっせいに火をともしました。このようにしてガスは、照明用として広まっていきましたが、熱としても使われるようになったのは、明治30年代で、ストーブやアイロン、コンロ、湯わかし器などが次々に輸入され、日本でも作られるようになりました。
 しかし、明治になっても内風呂を持っている人は少なく、あっても江戸時代の武家屋敷と変わらず、便所とともに離れに置かれたままでした。大正時代になって徐々に浴室や便所は住宅の中に入ってきました。一坪で浴槽と洗い場をつくれて、衛生、経済、防火の三徳があるとのことで五右衛門風呂が造り付け風呂の主流になりました。その後、ガスが熱として使われ始め、初めて、ガス給湯器の国産第1号が発売されたのは35年後の1930年(昭和5年)でした。給湯器の需要増大は、それから、25年後、戦後の混乱期をくぐり抜けた1950年代でした。
 そのきっかけというのもシャワーという入浴習慣を持つ進駐軍が、ガスのインフラ整備やガス器具開発を強く要望したという背景もあり、1950年代後半(昭和30年)、一般にはまだまだ、内風呂は贅沢であり大都市では銭湯全盛の時代に、ガス会社が積極的に風呂釜の提供を拡大し、それまでの薪・石炭という固形燃料からガス・石油へと大きく転換を遂げていきました。

国産第一号給湯器

 1965年(昭和40年)頃は台所のガス小型湯沸かし器、内風呂が普及する中で、湯沸かし器市場はシャワーニーズの高まりにより、中型湯沸かし器でのセントラル給湯の時代を迎えようとしていました。関西では風呂釜は屋外で種火を着けて、浴室からリモコンで本火に着火する方式が一般的でしたが、冬の夜は外に出るのも辛いし、種火が消えることもあり、うっかり空焚きによる家事の危険もありました。

 こんな中、1970年(昭和45年)に種火安全装置を備えて、浴室から点火、着火できるマジコン付き風呂釜は大ヒットとなり、その後の風呂釜のスタンダードになりました。

出典元:キッチン・バス工業会

 一方関東では風呂釜は屋内設置で煙突により排気ガスを屋外に排出する方式が主流でした。1955年(昭和30年)から建設が始まった公団住宅でもこの方式が採用されましたが、気密性の高い集合住宅では不完全燃焼に起因する事故が増加し、東京ガスの指導で、屋外の空気を直接取り入れ、屋外に排気ガスを出すバランス型給排気方式風呂釜が、1965年(昭和40年)に量産化されました。このバランス釜は戸建て住宅においても長く基本パターンとして採用されていくことになりました。

 1970年(昭和45年)にはハンドシャワー付きや上がり湯が使える画期的なシャワー付きが公団住宅採用化で普及拡大し、浴室シャワー化の一翼を担いました。

 一方でガス機器吸排気の安全面では屋外設置がベターであり、東京ガスからも屋外設置機器開発を強く要求されており、試行錯誤の末1975年(昭和50年)屋外設置専用型が発売され、この時以来、ガス風呂釜、給湯器は急速に屋外設置型が基本となっていきました。1977年(昭和52年)もともとガス機器への電気導入はタブーといわれていましたが、その既成概念を覆した台所リモコン、セミ貯湯式の屋外設置給湯器が発売され、新しい分野を形成することとなりました。

 その後給湯付き風呂釜は、マイコン導入、自動化と技術変換していくことになりますが、1980年(昭和55年)には送風ファンによる強制通風燃焼が開発され、ついに従来の2分の一にまでダウンサイズされた給湯器が登場しました。現在までの給湯機の基本パターンはこの時、形成されたものです。

 この頃ほとんどの家電製品が自動化されている中で、お風呂準備には、2度3度と浴室に足を運ぶ必要がありました。お湯をあふれさせり、熱くしすぎたり、そんなことからもお風呂の自動化は当然の開発方向でした。1983年(昭和58年)には戸建て住宅に対して全自動化発売、1984年(昭和59年)には集合住宅に対して発売にこぎつけました。

 当初は浴槽金具の水位センサーを読み取る方式でしたが、機器の水位センサーで浴槽水位を自動検知し、マイコン制御を採用となったのは1987年(昭和62年)でした。

 現在当たり前のようにある給湯器も様々な時代背景や過程の上に存在していることがわかります。

 長い歴史の中で進化してきた給湯器は、今や現在の暮らしには欠かすことのできない生活必需品となりました。  給湯器はお風呂を沸かしたり、食器を洗ったりする等、使いたいときにすぐお湯が使える便利な住宅設備機器です。もちろん、ガスというエネルギーが生み出した機器ですが、その進化は壊れたからただ取り替えるものから、環境や自らのライフスタイルに合ったものを選択し、暮らしの向上へ役立てるものとして立場を変えてきました。ちょっとずつの進化の積み重ねが今の給湯器になったようです。

出典元:キッチン・バス工業会